ビフォーアフター 人目を気にする家

おなじみ13坪。この坪数はよく出てくるなあ。都会ではこの単位の土地が多いようだ。住んでいるのは70代後半の女性。一階部分はすでに店を閉じた魚屋の店舗の残骸の奥に台所。脱衣所なしの風呂。二階は狭い和室で寝室として使用。バルコニーは隣の家の大きな窓の前で丸見え。隣の家の人も、このスペースをあてにして窓を設置しているから、リフォームの際に完全につぶしてしまうと近所付き合いに支障がありそう。
13坪二階建て、しかも一階部分で「おにぎり屋」を開きたいとのこと。チャレンジ精神はえらい。しかし、スペースはあるのか。ただ、冷静に考えれば、一人暮らしで13坪二階建て。単純計算で86平米はある。一人暮らしで86平米は広すぎるぐらいだろう。書籍や骨董などのコレクションがあるようにも見えないし。それなら、一階部分を店舗にしても全然問題ない。それほど高いハードルはないだろう。
「匠」は30歳そこそこの宮里藍に似た女性。
手堅く一階部分をすっきりした店舗に。閉店しているときは知人を呼んで簡単な喫茶として利用できるようにする。日常の料理もここでおこなうようだ。おにぎりだけにしては立派なシンクだから。2階部分は居住スペース。収納の多いコンパクトな寝室に腰掛けるとちょうどよさそうな二畳の畳スペース。収納部分には和服をしまう専用のしくみ。
水周りは2階にまとめ、洗濯物を干すバルコニーへ行くには風呂の中を通ることになった。これはたぶん、隣家に気を使った結果だろう。2階部分の以前のバルコニー部分に廊下を作ればいいはずだが、あえてそうせず1メートル以上のスペースをとったように見えた。ただ、その部分に一階に明かりを通す天窓もあるので、必ずしも100%犠牲的精神を発揮したというわけではないだろう。
店舗には注文の内容を管理するビー玉を使った専用のからくりが設置されたが、おにぎりのメニューが増えたらいきなり破綻しそうでどきどきする。もう少し拡張性のあるしくみの方がよかったのでは?しかし、店主の年齢を考えると拡張性をもたせる必要がないとの判断があったのだろうか。悪いがそんなことも考えちゃったり。
しかし、このリフォームはオーナーの戦略が明確だと思う。なかなかあの女性はクレバーだ。もともとの条件はそれほど悪くないし、普通のリフォームだけだと放送に見合わなかったかも知れない。しかし、店舗と絡めることで番組側にデザイン料の負担させた上で、新しく開く店の宣伝にもなる。大工におにぎりの試食をしてもらうシーンなど、商売っ気たっぷりだ。
ただ、番組に対するサービスも怠らない。完成後匠がやってくると涙でお出迎え。つられて匠ももらい泣き。いや、全て策略だとは言わないが、元気なお年寄りであります。ビフォーアフターというよりも往年のテレビ東京の店再生番組「貧乏脱出」みたいな雰囲気を漂わせた回だった。