BSアニメ夜話 マクロスの回を観る

録画していた「マクロス」の回を観る。
テレビ版のひどい記憶しかない。映画は観たことがなかった。
テレビ版が放映された当時、SF小説の読者であり、もちろん「アニメージュ」を購読していた中学生頃の私はマクロスの放送を楽しみにしていた。日曜日の昼2時というそれまでにない時間枠に、本格SFアクションアニメ作品が登場するというので、期待いっぱいだった。
第一話は、期待を裏切らない出来だった。登場するバルキリーをはじめとするメカも最高。敵の宇宙人が人間に比べてはるかに大きな巨人であること、さらに宇宙人が日本語を''話さない''ことなど、今考えるとそれほどすごいアイデアでもないが、テレビアニメでそれをやったのがすごいSF的なガジェットもたっぷり。絵もきれいだった。弟と一緒に次週を楽しみに待ったものだ。
しかし、話が進むにつれて、絵がひどくなり、ほとんど紙芝居のようになる。さらに、中学生が見ても気恥ずかしくなるような、甘ったるくて気持ちの悪い恋愛描写。ダサイ歌詞の音楽。あれほど楽しみにしていたのに、10話前後までちらちら観た挙句に、途中で観るのをやめてしまった。観続けるのが耐えられなくなったと言ったほうが正しいかもしれない。

しかし、そんな番組をずっと観ていた友人がいた。彼は、医者の息子だった。家には当時それほど普及していなかったビデオデッキがあり、それでマクロスを録画していた。大量に発射されるミサイルのすごさを、コマ送りで再生して見せてもらったりした。

あと、私は美樹本晴彦なる人物の描く絵が嫌いでならなかった。安彦良和氏の絵の劣化したエピゴーネンにしか観えなかった。アニメージュにも、彼の書いた美少女だとかが貴重なものであるかのように掲載されたことがあった。線のひきかたも、色の塗り方も安彦氏を真似しているが、全くレベルが違っていた。子供ながらに恥ずかしく感じた。

多分、この作品の数少ない魅力を楽しむことのできる連中が、その後の正当なアニメオタクになったのだろう。ある意味試金石的な作品だったのではないかと思う。