ミュンヘン

映画館で観ることができなかった作品。DVDで購入しておいたのだが、なかなか観る機会がなかった。今日、ヨメと娘が留守なので、それをいいことに観ることにした。

ミュンヘンオリンピックで発生したテロの報復としてイスラエルがおこなった暗殺を描いた作品だ。DVD の冒頭に異例のスピルバーグからのメッセージが付いている。イスラエルをはじめとするユダヤ社会に対する釈明じみたものだ。こんなものをつけなくてはならなかったスピルバーグの心情はどうだったろう。このことだけをとってもDVDを購入したかいがあった。

どこか感じるテーマに合わない描写の中に混じる軽さや、ご都合主義的な展開に引っ掛からないではないけれど、こういった作品を作る姿勢については敬意を払いたい。スピルバーグは過剰にメッセージを発信しない。報復の連鎖はなにものも産まない、という最終的なメッセージは、たしかに言葉だけ聴けば当たり前すぎるかもしれない。それを主人公に言わせている。しかし、それはあくまで登場人物のセリフであって、この映画はたぶんそれ以上のものを映し出している。

この映画の中には印象深いシーンが多い。キャラクターも豊富だ。

私が気になったのは主人公の母親だ。この母親はステレオタイプな母親のイメージとかけ離れている。「未来世紀ブラジル」にでもでてきそうな独裁国家の権力者のような容姿だ。真四角な顔に、真っ黒な短髪。瞳に心を感じない。主人公の妻が口にする言葉から、この母親は主人公を「キブツに捨てた」とのことだ。キブツとはユダヤ人が作った社会主義的共同生活集落だ。また、主人公の父親は首相とも旧知の関係らしい。両親ともに国家の要職についていたために、子育てを放棄しキブツで生活させたのだろうと思う。