会社の図書室から借りた少し前のベストセラーを読んだ。面白くて一気に読むことができた。
- 作者: 手嶋龍一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/02/28
- メディア: 単行本
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乱暴に分類すればスパイものだが、アクションはなくてそれこそ地味な情報戦が続く。その点はリアリティを感じる。ただ、登場人物の造形はとんでもなく空想的だ。課長島耕作と同じ印象を受ける。まあ、あんまり人物を描いても仕方がない。あの佐藤優氏が、お墨付きを与えた本当のインテリジェンス(諜報上の秘密)が、どの記述なのかを推測しながら読むだけで十分楽しい。
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ただ、この小説の成り立ちを考えると複雑な気分になる。
NHKの職員が準役人としての立場を利用して得た教養、知識、人脈が使われた作品であることが明確だからだ。
小説の中でも、三千数百円のカプセルホテル代も支払ってくれない会社で働くメーカーの社員が世界最先端のICタグを開発している。
教養にあふれ、見栄えもよく描かれているが、外務省の役人や外務官僚はたいへん優雅な生活をしながら、結局何にもしていない。本当に何にもしないままに国民を拉致され、日本メーカーの技術をまんまと盗まれ、しかもそれらのリソースを使って作られた偽ドルで、自分の国を攻撃できる核弾頭を運ぶミサイルを購入されてしまっているのだ。実際問題、これらは事実だったわけで、まあ、よくも何もしないで給料もらってるな。外務省。
とにかく、何かを生み出しているものを冷遇し、既得権の中で胡坐をかいている連中がうまい汁をしこたま吸いまくる日本社会の構造があまりに露骨に表れていて気分が悪くなる。
それに、主人公はBBCの記者を装う英国情報部のスパイではあるが、番組は個人的な好みや都合で企画している。元NHKの職員に、こんなことを書かれると、まあわかっちゃいるが、お前もそうだったんだろう、と詰問したくなってしまっても仕方がないだろう。
著者には悪いけど、図書室の本を借りて読んでよかった。これ以上彼ら役人やNHKに上納する金は、メーカーの貧乏社員にはないもんでね。