仮面ライダーカブトがパクリ?うーん。

http://www.aivy.co.jp/BLOG_TEST/kobakoba/archives/003103.html

このページを書いた方もすでに修正しているけれど、結論から言うと、パクリというようなレベルのもんじゃない。

仮面ライダーカブトの「クロックアップ」は、多くの人が指摘しているようにサイボーグ009あたりから来ているんだと思う。仮面ライダーサイボーグ009は同じ石ノ森章太郎原作だし。

ただし、別にこれは石ノ森章太郎のオリジナルのアイデアではない。たとえば日本のテレビアニメーション初期のヒット作「エイトマン」に、まったく同じ設定がある。歯にスイッチを埋め込んでいて「カチッ」と噛むと本人の知覚や運動神経が「加速」し、相対的に周りの風景が止まったようになる、という究極の技。エイトマンの原作を担当したSF作家平井和正は、石ノ森章太郎とは「幻魔大戦」で共作している。実は平井和正はよっぽど「加速装置」の設定が好きだったらしくって、「虎」シリーズと呼ばれる作品群の中ではよく使っている。私が好きな「メガロポリスの虎」という作品や、エイトマンの設定を元に主人公を黒人サイボーグ警察官にした「サイボーグブルース」という作品でも効果的に使われている。

なお、平井和正がオリジナルかというと、これまたそうではない。平井和正がもっとも好きなSF作家としてあげていたアルフレッド・ベスターの「虎よ、虎よ!」で、主人公ガリー・フォイルが使っているのがまったく同じように歯の中にスイッチを埋め込んだ加速装置。少し前なら、ある程度の年齢になって仮面ライダーを見ているようなSF的な物語を好む人々ならば当然のように読まれている作家だと思うけど、もうそんな時代じゃないんだろうな。でも、アルフレッド・ベスターの代表作「虎よ、虎よ!」と「分解された男」はものすごく面白いんだけど。

あまり関係はないけれど、筒井康隆のメジャーデビューのきっかけとなった「お助け」という作品も、特殊なトレーニングによって周囲の人々と時間間隔がずれてしまった宇宙飛行士の悲劇を描いたもの。「NULL」という家族同人誌に掲載したものが江戸川乱歩の目に留まった、というような話だったと思う。

もっと身近な例で言えば、ドラえもんにも同じような道具が出てきてる。

個人的には、仮面ライダーカブトクロックアップは、アルフレッド・ベスター「虎よ、虎よ!」の伝統を受け継ぐ正統派の「加速装置」だと思う。だから、ほほえましく観てた。だから、パクリという受け取り方をする人がいるのには驚いた。ある意味、すでに、1970年から80年代のSFブームの影響も消えてしまったということなんだろうと少しさびしく感じた。