御堂筋線の風景

23時過ぎ発の地下鉄に乗る。新大阪から梅田の間の駅で親子が乗ってきた。息子、娘、そしてその母親らしき人物。皆背が低い。息子と娘は少し病的な感じの太り方をしている。私の隣のシートが空いていたので、姉と思われる娘と、母親が息子に座れと言う。息子は何の躊躇もなく座った。持っていた荷物などが私の足をかすったのに気づいた母親が不自然なほど恐縮した面持ちで「すいません」と謝る。しょっちゅう息子のために謝っているのではないかという印象を受ける。息子はまったく関心がなく座ったとたんに携帯電話を操作しはじめた。
足元の複数の紙袋の中にガンプラのパッケージが詰まっているのが見えた。息子は20歳近くに見えたので、わざわざ親と一緒にガンプラを持ち歩くのが不思議だ。気になって親子を観察した。
空きシートが残っているが、姉は立ったまま文庫本を取り出して片手で持って読み始めた。不思議なのは縦書きの文庫本を横に寝かせて読んでいることだ。母親や弟とは少し離れて立っている。
母親は息子の前につり革を持って立っている。息子は携帯電話を無言で操作する。息子への母親の態度から障害を持っているのかと思っていたが、携帯電話の操作は見事でステレオフォンを耳につけて音楽を聴いているようだ。ただ、母親や姉と違ってこの息子は少し変だ。髪はボウボウ、不自然な太り方。狭い額。流行を追ってるとも思えないのだが、白いチノパンの股下が不自然に膝に近くなっている。そして股を大きく開いて座っている。私にすれば少々邪魔だ。息子の隣のシートが空いたので母親が座る。まもなく親子そろって舟を漕ぎ出す。息子の足元の紙袋にはガンプラ以外に丸めたポスターが刺さっている。女性アイドルのようだ。
姉は文庫本を横にして読み続ける。親子は舟を漕ぐ。息子の横顔が見える。細い目。たくさんのガンプラ。アイドルのポスター。不自然な太り方。
天王寺に着く前に親子は降りていった。