筒井康隆より地味

となり町戦争

となり町戦争

地域の広報を眺めていたら、戦争開始の案内がひっそり掲載されている。それから地味に、地味に戦争が始まるのだが。

筒井康隆の「東海道戦争」や、小松左京の「春の軍隊」の方がはるかに強烈で切れ味が鋭い。東海道戦争では日本が東日本と西日本に分かれてエンターテイメントとして戦争を始めるし、春の軍隊では日常の中にいきなり戦争が土足で踏み込んでくるし(まあ、もともと戦争って、そういうものなんだけどね)、いまだにその鮮明なイメージは消えない。

ただ、この作品には安部公房村上春樹に似た、突拍子もない話を朴訥に語ることでかもし出される不思議なリアリティがある。しかし、物語の流れ方は悪くないのに、途中でえらく真正面な「戦争というのは…」みたいな地の文ぽいものが混ざってきたときに、せっかくのその雰囲気が壊れてしまう。ちょっと残念。

コントレオナルドのお汁粉公社(?)みたいな、役所仕事でやるとこうなる、みたいな部分をもっと突き詰めて事細かに書いていたら、ずっと楽しめるはずなんだけど。たまに出てくる書類のフォーマットは楽しいもんなあ。

それにしても、この分量で単行本というのが信じられない。せいぜい少し長めの中篇ぐらいしかないよ。まあ、映画化するにはその程度の分量のほうがいいよね。会社の図書室で借りたからいいけどね。