「火垂るの墓」に関する低い評価(米Amazon)

http://anond.hatelabo.jp/20070811193806

このレビューの指摘はもっともであるし、評者は正しくこの映画のテーマを読み取っている。しかし、それをもとに映画の評価を下げるのは間違っているのではないか。

なぜなら、この映画のパンフレット自体に、野坂昭如自身が、評者と同じことを述べているのだ。この映画は戦争を描いたものではあるが、同時に、若い無思慮な少年が自分自身のつまらない自尊心を原因に妹を死なせてしまったこともあからさまに描いた物語なのだ。

父親の純白の海軍服に憧れ、戦争での日本の勝利を無条件に信じるこの少年は、勝ち目のない戦いに無自覚に足を踏み込んでいった日本人全体の暗喩にもなっている。彼らはたんなる被害者ではない。

予備知識が少しでもあって高畑勲の立ち位置を考えれば、こんな事は自明のことだし、そういった情報を知らなくても、この評者のように、きちんとそれを感じることができる人間は世界にたくさんいるわけだ。残念なのは、その違和感を、映画の瑕疵としてしまうことだ。その違和感こそをこの映画は表しているのに。映画自体の目指したものを正確に伝えられたがゆえに、低く評価されるとは、なんて皮肉なことだろう。

野坂昭如は映画パンフレットの中で述べている。実は、この物語の主人公である少年は、現代の少年(公開当時のではあるが)と同じメンタリティーなのではないかと考えていると。

生まれた時から衣食足り、人に頭を下げる必要もなく生きてきて、自尊心のみが肥大化した人間がどのように過ちを犯すか。日本も、韓国も、そして最近では中国にもそういう人々が増え、今後は日常生活の諍いの中で小さな火垂るの墓が繰り返し作られるんじゃないか。
もしかすると、ニートというのは、自分自身の火垂るの墓を作っている人たちなのかもしれないな。

http://d.hatena.ne.jp/LM-7/20070807/1186763200



追記

何気なく書いたこの記事が多くの方に読まれたことにあわてて追加した記事です。

http://d.hatena.ne.jp/tyosaka/20070816/p1