嫌われ松子の一生

日本映画チャンネルでHD放送されていたので録画して何度か繰り返し観てしまった。初めて観た時も強い印象を受けたが、改めてより強く感動してしまった。心に残る映画の一つになった。

しかし、一人の女性がとことん不幸せになっていくことを観てどこに感動するのか。自分でもわからず不思議に思った。松子自身に感情移入できるわけではない。むしろ、彼女の選択や行為に違和感を感じることのほうが多い。しかも、やたらと極端でカリカチュアされた不幸のどん底オンパレード。ドキュメンタリー的なリアリティは全くない。

だが、この映画の中には、たしかに松子が生きていて、心から「なぜ」と叫んでいる。そして、それは自分の中の松子の叫びにも聞こえるし、街で見かけた少し不幸そうな人の心の叫びにも聞こえるのだ。どうしても、自分との関わりとしてしか意識できない他者の存在に、改めて重みを感じ、少しだけでも真摯な気持ちになる。