ビフォー・アフター 湯気でくもる家

住宅密集地に建つ9坪の家。9坪といえばおよそ30平方メートル。18畳分。6畳間が三部屋分。二階建てなら60平方メートル。二人で住むなら十分な広さのはず。なぜかダイニングが異常なほど狭い。台所のすぐ横に脱衣場なく風呂がある。台所で服を脱いで風呂に入る。周りを他の家に囲まれていて採光可能な場所が限られているのに、その部分を壁にしてしまっている。数千万円もするものなのにひどいもんだ。買い手のことをまったく考えていない業界だったんだなー、と再認識。今も怪しいけれど。

ただ、使うほうも使うほうで、小さな庭のスペースも物置状態。ビニール袋に包んだものが積み重なる庭はゴミ屋敷化直前といったイメージ。いらないものを捨てればリフォームするまでもないんじゃないか、なんて思ったり。物置になっている部屋があるのももったいない。ただ、荷物が多いのは他人事ではない。他山の石として自戒しなくちゃ。

ごちゃごちゃと集中していた水回りを分離。唯一日が当たる場所に大窓を付けて、オーソドックスだが手堅い採光。
匠の細工がずいぶんこじんまりしていた。犬の寝床の脱臭用炭を収納する敷物の下敷き。狭い庭をつぶして作ったデッキスペースに、それを洗う専用の洗い場が用意されているのはいい。テレビではわからなかったが、匠が最初に家の訪問をおこなったとき、相当、犬臭かったんだろうな。私の家も以前犬を飼っていたときはかなり強い匂いがしていた。犬がいなくなったらその匂いはなくなった。

二階には、奥さんが針治療をおこなうことができる部屋兼客間、反対側に寝室となる和室。使いやすそうでいい感じだ。ただ、常人に考え付かない天才的な間取りや、ものすごい技術が加えられているわけじゃない。

結局、この番組の要所は、出来上がった平均点の少し上の家じゃなくて、リフォーム前の家。どんなひどい家に住んでいるのか、いったいこんな風に作ったやつは誰やねん。誰か制止するもんはいなかったんか、責任者出て来いっ!という驚きだと思う。匠がどんな工夫したところで、大工や工務店が住む者のことを何も考えずに場当たり的に作った家の強烈な奇矯さや、カフカ的不条理には負ける。