ロビンソン・クルーソー(上)

学研の少年少女世界文学全集(http://d.hatena.ne.jp/asin/4050503093)で何度も読み返した作品を、再度読もうと思って取り寄せた。せっかく大人になったのだから、忠実な訳で読みたいと思って岩波の上下巻ものにした。とりあえず、上巻を読み終えた。よく知られている漂流記は、この上巻にあたる。学研の全集版ではあとがきに原著から削った箇所について書いてあった。たしか、主人公が過度に宗教について語る部分はキリスト教に疎い日本の読者向けに、二度目の難破船の漂着に関するエピソードは全体のストーリー上削っても影響がないために削除した、と明記されていたのだ。今回おかげさまで、その部分を30年の時を経て確認することができた。たしかに削除の意図はよくわかった。ただ、デフォー自身は、実はそのキリスト教についての考察部分をこそ読んでほしかったのかな、と思った。

あと、全集版では解説に、原著自身のおかしな点として、犬が突然話に出てきたかと思ったら、途中一切登場しなかった所などを容赦なく指摘していた。そういう意味じゃ面白い全集ものだったなあ。

作品自体、さすがに時代的な違和感はあちこちで沸く。今のテレビ放送では到底放送できない数の「土人」「野蛮人」といった表現や「女を5人ほど送った」のような、まさに物品として女性を扱う記述のもとになる思想だ。ただ、1600年代だったら仕方ない。むしろ、宗教的な激しい情熱に浮かされる時期をのぞく合理的な知性は、へんてこな詐欺師の出てくる似非宗教テレビ番組を観て信じている人間とは比べ物にならないくらい高い。スペイン人によるアメリカ大陸での原住民の大量虐殺への批判はごくごく「常識的」だ。

ただ、個人的にこの作品の楽しいところは、無人島で自分を守る城砦を一人で一から作るところや、大きな丸木船を作り上げるところや、穀物を計画的に増やしていくところだ。なぜか何度読んでもそこが楽しくて繰り返して読んでしまう。

ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫)

ロビンソン・クルーソー〈上〉 (岩波文庫)